顔面神経麻痺の柳原法とは 40点満点の評価項目と点数の見方
顔面神経麻痺の柳原法とは 40点満点の評価項目と点数の見方
顔面神経麻痺で医療機関を受診した際に、
「柳原法で10点です」
「前回より点数が上がっています」
と説明されることがあります。
しかし、初めて聞く方にとっては、何を調べた点数なのか、点数が低いと回復しないのか、不安になることもあるでしょう。
柳原法は、顔の各部分がどのくらい動いているかを40点満点で評価する方法です。日本では、末梢性顔面神経麻痺の重症度や回復経過を確認するために広く使われています。
この記事では、柳原法の評価項目や点数の見方、ENoGとの違いについて分かりやすく解説します。
柳原法とは
柳原法は、顔をいくつかの領域に分け、安静時の左右差と表情運動を観察する評価法です。「柳原40点法」と呼ばれることもあります。
評価するのは、次の10項目です。
| 評価項目 | 確認する主なポイント |
|---|---|
| 1.安静時の左右差 | 何もしていないときの目、頬、口元の左右差 |
| 2.額のしわ寄せ | 眉を上げたときに額が動くか |
| 3.軽い閉眼 | 力まずに両目を閉じられるか |
| 4.強い閉眼 | しっかり目を閉じたときの力や左右差 |
| 5.片目つぶり | 麻痺側の目だけを閉じられるか |
| 6.鼻翼を動かす | 鼻の周囲を左右同じように動かせるか |
| 7.頬を膨らませる | 空気が漏れずに頬を膨らませられるか |
| 8.「イー」と歯を見せる | 口角を横へ引いたときの左右差 |
| 9.口笛の形 | 唇を前へすぼめられるか |
| 10.口をへの字に曲げる | 下唇や口角を下へ動かせるか |
顔全体を一つの印象だけで判断せず、額、目、鼻、頬、口元を分けて確認できることが柳原法の特徴です。
柳原法の点数はどのようにつけるのか
各項目を、基本的に次の3段階で評価します。
4点:ほぼ正常に動く
2点:一部は動くが左右差がある
0点:動きがほとんど確認できない
10項目を合計するため、満点は40点です。
点数が高いほど顔の動きが保たれており、低いほど麻痺が強いことを表します。
2016年に改訂された判定基準では、40点満点のうち「10点以下」を完全麻痺、「12点以上」を不全麻痺と判定します。
ただし、ここでいう「完全麻痺」とは、顔の動きに基づく重症度分類です。
「顔面神経が完全に切れている」「今後回復しない」という意味ではありません。
20点なら50%回復したという意味ではない
柳原法は40点満点ですが、20点だから顔面神経が50%回復したという意味ではありません。
この点数は、顔の10項目を観察して合計したものです。
例えば同じ20点でも、
目は閉じられるが口元が動きにくい
額は動かないが口元は比較的動く
顔全体が少しずつ動いている
など、顔の状態は人によって異なります。
合計点だけでなく、「どの部分が、どのように動いているか」を確認することが重要です。
柳原法で分かること
柳原法を繰り返して評価すると、顔の動きの変化を記録できます。
麻痺がどの程度強いのか
額、目、口元のどこが動きにくいのか
治療開始後に点数がどう変化したか
どの動きから戻ってきているか
回復が停滞している部分はどこか
見た目の印象だけでは、「少し良くなった気がする」「昨日より悪く見える」など、評価が揺れやすくなります。
同じ項目を継続して記録することで、回復経過をより整理しやすくなります。
柳原法の点数だけでは回復の見通しを決められない
柳原法は、現在の顔の動きを評価するうえで有用です。
一方、柳原法の点数だけで、将来どこまで回復するかを断定することはできません。
回復の見通しを考える際には、次のような情報も確認します。
ベル麻痺やハント症候群などの原因
発症から評価までの日数
麻痺が最も強くなった時点の点数
年齢や基礎疾患
味覚、涙、聴力、めまいなどの症状
ENoGなどの神経検査
その後の点数や症状の変化
発症直後は、その後さらに麻痺が進行する場合もあります。
最初の点数だけで一喜一憂せず、医療機関で継続的に経過を確認することが大切です。
柳原法とENoGの違い
柳原法とENoGは、どちらも顔面神経麻痺の評価に使われますが、調べているものが異なります。
| 柳原法 | ENoG | |
|---|---|---|
| 評価するもの | 実際の顔の動き | 電気刺激に対する顔面筋の反応 |
| 方法 | 表情運動を観察して採点 | 顔面神経を刺激して筋電図を記録 |
| 主な目的 | 麻痺の程度と経過の確認 | 神経障害の程度や予後を考える材料 |
| 特徴 | 簡便で繰り返し評価しやすい | 実施時期が重要で、医療機関で行う |
柳原法は、「現在、顔がどれくらい動いているか」を見る評価です。
ENoGは、顔面神経を電気的に刺激し、麻痺側の筋肉にどの程度反応が残っているかを健側と比較する検査です。
どちらか一方の数値だけで判断するのではなく、両方の結果や症状の経過を合わせて考えることが大切です。
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顔面神経麻痺のENoG検査とは?10%・40%の意味を分かりやすく解説
柳原法だけでは評価しにくい症状もある
柳原法は、顔の動きの程度を確認することには優れていますが、顔面神経麻痺の後遺症を詳しく評価するための方法ではありません。
例えば、次のような症状です。
口を動かすと目が閉じる病的共同運動
頬や口元の拘縮、こわばり
顔面けいれん
食事中に涙が出るワニの涙
これらの症状は、柳原法の合計点だけでは十分に表せないことがあります。
顔の動きが38点や40点に近づいても、病的共同運動やこわばりによって日常生活に困る方もいます。
治癒の判定では、38点以上という点数に加えて、「中等度以上の病的共同運動が残っていないこと」も条件とされています。
そのため、合計点が高くなったあとも、目と口が一緒に動いていないか、顔に過剰な力みやこわばりがないかを確認する必要があります。
柳原法を鍼灸施術にどう生かすのか
顔面神経麻痺に対する鍼灸では、動きにくい場所だけに鍼をするのではなく、麻痺の程度と回復段階を把握することが重要です。
柳原法の各項目を確認することで、
目の周囲と口元のどちらに麻痺が強いか
軽い動きと強い動きで差があるか
前回からどの部分が変化したか
病的共同運動や過剰な力みが出ていないか
などを整理できます。
顔面神経麻痺では、急性期、回復期、後遺症がみられる時期によって、鍼灸の刺激量や目的、セルフケアの内容も変わります。
『顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版』では、急性期における麻痺の早期回復と、慢性期における拘縮やこわばりなどの後遺症軽減を目的とした鍼治療について、いずれも「弱く推奨する」とされています。
「弱く推奨する」とは、すべての方に一律に行うという意味ではありません。
病期や麻痺の程度、医療機関での治療内容などを確認したうえで、選択肢の一つとして検討するという位置づけです。
医療機関での診断や薬物治療、必要なリハビリを大切にしながら、回復段階に応じて鍼灸を組み合わせます。
【関連記事】
顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版における鍼灸の役割と可能性
亮鍼灸院で確認していること
札幌の亮鍼灸院では、柳原法の合計点だけでなく、10項目それぞれの動き方を確認します。
さらに、次の内容も確認しています。
発症日と診断名
使用している薬
柳原法の点数の推移
ENoGなどの神経検査結果
目、耳、味覚に関する症状
病的共同運動や顔のこわばり
顎、首、肩の緊張
日常生活で困っていること
これらを整理したうえで、現在の回復段階に合わせて施術内容を検討します。
病院で柳原法やENoGの結果を受け取っている場合は、初回来院時にお持ちください。
点数の意味が分からない場合も、これまでの経過と照らし合わせながら一緒に整理します。
顔面神経麻痺は一つの点数だけでは判断できない
柳原法は、顔面神経麻痺の重症度や回復経過を確認するために役立つ評価方法です。
ただし、一つの合計点だけで顔の状態や今後の回復がすべて分かるわけではありません。
柳原法の合計点に加えて、一つひとつの動き、ENoGなどの検査結果、症状の経過、日常生活で困っていることを合わせて確認することが大切です。
亮鍼灸院では、札幌市東区の栄町院と札幌市中央区の大通院で、顔面神経麻痺に対する鍼灸施術を行っています。
参考資料
『顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版』日本顔面神経学会編
※本記事は、顔面神経麻痺に関する一般的な情報提供を目的としています。顔面神経麻痺が疑われる症状を発症した場合は、鍼灸院への相談より先に、耳鼻咽喉科などの医療機関を受診してください。
亮鍼灸院
院長 永田亮太(ながたりょうた)
はり師・きゅう師、柔道整復師の国家資格を持っています。
・北斗病院鍼センター非常勤鍼灸師
・十勝リハビリセンター非常勤鍼灸師
心電図にて自律神経測定を行い、鍼灸における自律神経の影響を研究しています。








