ENoGとは?顔面神経麻痺の予後を考える大切な検査
「ENoGが○%と言われたけれど、これは良いの?悪いの?」――顔面神経麻痺で病院に通っている方から、当院でもよくいただく質問です。ENoGは、回復の見通しを考えるうえで大切な検査です。このページでは、検査の中身と数値の受け止め方を、できるだけやさしく解説します。
このページの大切なポイント
ENoGは「回復の見通しを考える材料のひとつ」です。数値だけで、回復するかどうかが決まるわけではありません。ご自身の結果の意味は、必ず検査を受けた医療機関の医師に確認してください。
ENoGとは
ENoG(Electroneurography:誘発筋電図検査)は、耳の下あたりで顔面神経に弱い電気刺激を与え、口のまわりの筋肉の反応の大きさを測る検査です。麻痺している側の反応が、健康な側と比べて何%あるかを数値で表します。
たとえば「ENoG 40%」なら、麻痺側の反応が健康な側の40%程度ということです。数値が低いほど、傷んで反応しなくなった神経線維が多いことを示します[2]。
なぜ大切な検査なのか
発症直後の顔の動きだけでは、その後どのくらい回復するかを見分けにくいことがあります。同じように顔が動かない方でも、神経の傷みが一時的なものか、より深いものかで、回復のスピードや後遺症の起こりやすさが変わってくるためです。ENoGは、この「神経の傷みの程度」を数値で確認できる点に意味があります。
検査を受ける時期
ENoGは、発症からおおむね7〜14日ごろに行われることが多い検査です[1][2]。発症直後は神経の傷みがまだ数値に表れにくいため、早すぎる時期の検査では正確な判断がしにくいとされています。
電気刺激はある程度強く、ピリッとした痛みを感じる方もいます。検査は医療機関で行われるもので、鍼灸院では行えません。
ENoGの値と回復の目安
日本の総合病院で、急性の顔面神経麻痺の方110人を対象に、発症7〜14日のENoG値とその後の回復を調べた研究があります[1]。
| ENoGの値 | 回復した方の割合 |
|---|---|
| 40%以上 | 98% |
| 20〜40% | 96% |
| 10〜20% | 90% |
| 0〜10% | 58% |
| 0% | 24% |
出典:南 修司郎ほか.耳鼻咽喉科臨床 2008;101(6):435-439 の結果をもとに作成(観察期間は発症後最長6か月)。
この研究では、ENoGの値が高い方ほど早く回復する傾向もみられました。一般に、10%を下回ると回復に時間がかかりやすく、後遺症にも注意が必要と考えられています。
また別の研究では、発症10〜14日のENoG値が低いほど、1年後に「口を動かすと目が細くなる」タイプの共同運動が起こりやすかったと報告されています[3]。後遺症について詳しくは「顔面神経麻痺の共同運動・拘縮とは?後遺症を解説」をご覧ください。
数値の受け止め方で気をつけたいこと
- 数値だけで予後は決まらない:専門家の解説でも、電気生理検査の結果だけで予後を判断せず、顔の動きの評価(柳原法など)と組み合わせて総合的に判断することが大切とされています[2]。
- 低い値でも回復する方はいる:上の表のとおり、ENoGが10%未満でも回復した方は一定数います。逆に、高い値でも経過を見ていくことは大切です。
- 測る時期で数値は変わる:いつ測ったかによって値が変わるため、他の方の数値と単純に比べることはできません。
- 数値は「今どんな時期か」を知る手がかり:結果が思わしくなくても、それは「回復に時間がかかりやすいので、焦らず、後遺症に気をつけながら過ごそう」という見通しを立てるための情報です。
ENoGの結果がわかったら
主治医に確認しておきたいこと
- 自分の数値は、どのくらいの回復の見通しにあたるのか
- 追加の治療や、再検査の予定はあるか
- リハビリや日常生活で気をつけることはあるか
回復までの過ごし方
ENoGの値が低く、回復に時間がかかりそうな場合ほど、顔を強く動かしすぎないことが大切になります。神経が回復していく途中で無理に大きく動かすと、共同運動などの後遺症につながる可能性があると考えられているためです。具体的な考え方は「顔面神経麻痺のリハビリ|やりすぎに注意したい理由」で解説しています。
亮鍼灸院では
当院では、初回に病院で受けたENoGや柳原法の結果をうかがい、その数値が何を意味するのかを、わかる範囲でご説明しています。「数値の意味がよくわからないまま不安だった」という方が少なくないためです。数値の最終的な解釈や治療方針は、主治医の判断を優先していただきます。
ENoGの値は、当院が施術の時期やねらいを考えるうえでも参考にしています。たとえば、数値が低く回復に時間がかかりそうな方には、早い時期から後遺症を意識した過ごし方をお伝えするようにしています。また、顔だけでなく、首・顎・肩まわりの緊張や呼吸の状態など、体全体の様子もあわせて確認します。
実際に、ENoG 12%と重症と説明された方の経過を「重症例(ENoG12%)の顔面神経麻痺の症例」でご紹介しています(経過には個人差があり、同様の結果を保証するものではありません)。当院の施術について詳しくは「札幌で顔面神経麻痺の鍼灸をお探しの方へ」をご覧ください。
参考文献
- 南 修司郎,新田 清一,大石 直樹,山下 拓,和佐野 浩一郎.末梢性顔面神経麻痺予後の検討 ENoGを中心に.耳鼻咽喉科臨床.2008;101(6):435-439. [DOI]
- Haginomori SI. An electrophysiological prognostic diagnosis for facial palsy. Auris Nasus Larynx. 2023;50(2):180-186. [PubMed]
- Azuma T, Nakamura K, Takahashi M, et al. Electroneurography in the acute stage of facial palsy as a predictive factor for the development of facial synkinesis sequela. Auris Nasus Larynx. 2018;45(4):728-731. [PubMed]
※ 本ページは顔面神経麻痺についての一般的な情報提供を目的としたもので、医療機関での診断・治療に代わるものではありません。
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