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ベル麻痺とは?原因・症状・治療・回復までを解説

公開日:2026年10月3日
執筆・監修:鍼灸師 永田亮太(亮鍼灸院 院長)

朝起きたら顔の片側が動かない、うがいの水が口の端からこぼれる、まぶたが閉じにくい――。こうした症状で多いのが「ベル麻痺」です。このページでは、ベル麻痺の原因・症状・病院での検査と治療・回復の見通しを、患者さんの立場で知っておきたい順番にまとめました。

まずは医療機関の受診を

顔の片側が急に動かしにくくなったら、まず耳鼻咽喉科・神経内科などの医療機関を受診してください。脳の病気など、ベル麻痺以外の原因を区別することが必要です。また、ベル麻痺の治療(ステロイド薬など)は、発症からできるだけ早く始めることが大切とされています。

こんな症状はありませんか

  • 顔の右半分または左半分が、急に動かしにくくなった
  • 口の端から水や食べ物がこぼれる・うがいがしにくい
  • まぶたがしっかり閉じない、目が乾く
  • 耳の後ろの痛み、音が響く、味がわかりにくい
  • おでこにしわを寄せられない

ベル麻痺では、顔の片側の「おでこ・目・口」がまとめて動きにくくなるのが特徴です。おでこのしわ寄せができるかどうかは、医師が脳の病気と区別する手がかりのひとつにもなります。

ベル麻痺とは

ベル麻痺は、顔の表情をつくる筋肉を動かしている「顔面神経」が、はっきりした原因が見つからないまま急に麻痺する病気です。末梢性顔面神経麻痺の中で最も多いタイプで、子どもから高齢の方まで起こります。

顔面神経は表情筋だけでなく、涙や唾液の分泌、舌の前側の味覚、音の響きを調整する筋肉にも関わっています。そのため、顔の動きにくさに加えて、涙の量の変化・味覚の違和感・音が響くといった症状を伴うことがあります。

原因と起こるしくみ

ベル麻痺の原因は、まだすべてが解明されているわけではありません。体の中に潜んでいた単純ヘルペスウイルスが再び活動し、顔面神経に炎症が起こることが関係していると考えられています。

顔面神経は、耳の奥にある細い骨のトンネル(顔面神経管)の中を通っています。炎症で神経がむくむと、この狭いトンネルの中で神経が圧迫され、さらに傷みやすくなると考えられています。発症後しばらくは麻痺が進むことがあるのはこのためです。

疲れやストレス、睡眠不足、体調をくずした後に発症したと話される方も多くいます。ただし、これらが直接の原因と言い切れるわけではありません。

病院での検査と治療

診察と麻痺の程度の評価

医療機関では、問診や診察で他の病気がないかを確認したうえで、顔の動きを点数化して麻痺の程度を評価します。日本では「柳原法(40点法)」がよく使われています。

ENoG(誘発筋電図)などの電気生理検査

麻痺が強い場合には、神経がどのくらい傷んでいるかを調べる「ENoG」という検査が行われることがあります。発症から1〜2週間ほどの時期に行われることが多く、回復の見通しを考える材料になります。詳しくは「ENoGとは?顔面神経麻痺の予後を考える検査」で解説しています。

薬による治療

ベル麻痺の治療の中心は、神経の炎症やむくみを抑えるステロイド薬です。英国で行われた大規模な臨床試験では、発症72時間以内にステロイド薬(プレドニゾロン)を始めた方は、使わなかった方よりも回復した割合が高かったと報告されています(3か月後 83.0% 対 63.6%、9か月後 94.4% 対 81.6%)[2]。症状や重症度によって、抗ウイルス薬が併用されることもあります。

米国の診療ガイドラインでも、発症72時間以内のステロイド内服と、まぶたが閉じにくい方の目の保護が強く推奨されています[3]。治療の内容は医師が判断しますので、処方された薬は自己判断でやめないようにしましょう。

回復の見通し

ベル麻痺は、多くの方が回復に向かう病気です。治療を行わなかった方を長期に追った海外の研究でも、約7割の方で表情がほぼ元どおりになったと報告されています[4]。

一方で、同じ研究では、顔のこわばり(拘縮)や、口を動かすと目が閉じるなどの「病的共同運動」が残った方も一定の割合でみられました[4]。麻痺が強く、神経の傷みが大きかった場合ほど、回復に時間がかかったり後遺症が残ったりしやすいと考えられています。

回復の見通しは一人ひとり違います

回復のスピードは、麻痺の程度・ENoGの値・治療開始までの日数・年齢など、さまざまな条件で変わります。「何週間で元に戻る」と一律に言えるものではありません。ご自身の見通しについては、検査結果をもとに主治医に確認しましょう。

後遺症について詳しくは「顔面神経麻痺の共同運動・拘縮とは?後遺症を解説」を、再発については「顔面神経麻痺の再発について」をご覧ください。

ハント症候群との違い

顔面神経麻痺の原因として、ベル麻痺の次に多いのが「ハント症候群(ラムゼイ・ハント症候群)」です。耳の痛みや耳まわりの水ぶくれ、耳鳴り・難聴・めまいを伴うことがあり、ベル麻痺より回復に時間がかかりやすいとされています。違いは「ベル麻痺とハント症候群の違い」で詳しく比較しています。

回復期に気をつけたいこと

  • 目を守る:まぶたが閉じにくい間は、目が乾いて傷つきやすくなります。目薬・眼軟膏・保護用テープなど、医師の指示に従ってケアしましょう。詳しくは「顔面神経麻痺で目が閉じにくいときのケア」で解説しています。
  • 顔を強く動かしすぎない:早く動かしたい気持ちから、鏡の前で力いっぱい顔を動かす方が少なくありません。強い運動は、後遺症の面から注意が必要とされています。詳しくは「顔面神経麻痺のリハビリ|やりすぎに注意したい理由」で解説しています。
  • 無理をしない:睡眠や休養をとり、体調を整えることも大切です。

ベル麻痺と鍼灸

日本顔面神経学会の『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』では、鍼治療について「急性期の麻痺の回復」「慢性期の後遺症の軽減」の2つの臨床課題が検討され、どちらも「弱く推奨する」とされています[1][5]。一方、米国のガイドラインでは鍼について推奨を決められないとしており[3]、評価は国や時期によって分かれています。

鍼灸は、病院での治療の代わりになるものではありません。当院では、病院での治療を続けていただくことを前提に、補完的な選択肢として施術を行っています。発症直後に鍼灸を受けることについては「発症直後に鍼灸を受けてよいか」で詳しく解説しています。

亮鍼灸院の考え方

当院では、顔面神経麻痺を重点的に取り組む症状のひとつとしており、ベル麻痺の方に次のような流れで状態を確認しています。

  • 病院での診断・治療内容の確認:発症日、服薬の内容、柳原法やENoGなど検査結果をうかがいます。検査結果の意味がわかりにくい場合は、わかる範囲でご説明します。
  • 顔だけでなく全身の緊張を確認:顔の動きに加えて、首・顎・鎖骨・肩甲骨まわりの緊張、呼吸の浅さなど、体全体の状態を触診や動作で確認します。
  • 時期に合わせた施術:発症直後・回復期・後遺症が気になる時期で、施術のねらいや強さを変えています。

首や顎まわりの緊張がゆるむと、顔の動かしやすさに変化を感じる方がいることを、当院では臨床の中で経験しています。ただし、それが神経の回復を早めると断定できるわけではありません。経過には個人差があります。

実際の経過は「顔面神経麻痺の鍼灸症例」でご紹介しています。当院での施術内容や料金は「札幌で顔面神経麻痺の鍼灸をお探しの方へ」をご覧ください。

執筆・監修

鍼灸師 永田亮太

  • 亮鍼灸院 院長
  • 明治国際医療大学大学院 在籍
  • はり師・きゅう師・柔道整復師
  • 日本顔面神経学会「顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会」認定試験 合格(2025年8月)
  • 2024年度 日本顔面神経学会にて症例発表

院長プロフィールを見る →

参考文献

  1. 日本顔面神経学会 編.顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版.金原出版;2023.
  2. Sullivan FM, et al. Early treatment with prednisolone or acyclovir in Bell's palsy. N Engl J Med. 2007;357(16):1598-1607. [PubMed]
  3. Baugh RF, et al. Clinical practice guideline: Bell's palsy. Otolaryngol Head Neck Surg. 2013;149(3 Suppl):S1-27. [PubMed]
  4. Peitersen E. Bell's palsy: the spontaneous course of 2,500 peripheral facial nerve palsies of different etiologies. Acta Otolaryngol Suppl. 2002;(549):4-30. [PubMed]
  5. 粕谷大智.顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版における鍼灸の役割と可能性.全日本鍼灸学会雑誌.2023;73(4):277-282. [J-STAGE]

※ 本ページは顔面神経麻痺についての一般的な情報提供を目的としたもので、医療機関での診断・治療に代わるものではありません。

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