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顔面神経麻痺の共同運動・拘縮とは?後遺症を解説

公開日:2026年10月3日
執筆・監修:鍼灸師 永田亮太(亮鍼灸院 院長)

顔の動きはだいぶ戻ってきたのに、「口を動かすと目が細くなる」「顔がこわばって突っ張る」「食事のときに涙が出る」――。顔面神経麻痺の回復の途中から、こうした症状が気になり始める方がいます。このページでは、顔面神経麻痺の後遺症として知られる症状と、その起こり方、向き合い方を解説します。

こんなことが気になっていませんか

  • 口を「イー」「ウー」と動かすと、麻痺した側の目が細くなる・閉じる
  • まばたきをすると、口角が引っ張られる
  • 顔がこわばる、突っ張る、ほうれい線が深くなった気がする
  • まぶたや頬が、自分の意思と関係なくピクピク動く
  • 食事のときに、麻痺した側の目から涙が出る

これらは、神経が回復していく過程で起こりうる症状です。「せっかく動いてきたのに」と不安になる方も多いのですが、まずは何が起きているのかを知ることが大切です。

後遺症はどうして起こるのか

顔面神経麻痺で神経が強く傷むと、神経線維は時間をかけて再び伸びていきます(再生)。このとき、もともと「目を閉じる筋肉」につながっていた線維が「口を動かす筋肉」にもつながってしまうなど、つながる先が入り混じることがあります。これを「過誤支配(かごしはい)」と呼び、共同運動やワニの涙の主な原因と考えられています。

そのため後遺症は、発症直後ではなく、神経が再生してくる時期(発症から数か月たったころ)から目立ってくることが多いとされています。麻痺が強く、神経の傷みが大きかった方ほど起こりやすい傾向があります。治療を行わなかったベル麻痺の経過を追った研究では、拘縮が17%、共同運動が16%の方にみられたと報告されています[1]。発症早期のENoGの値が低い方ほど、1年後に共同運動が起こりやすかったという報告もあります[2]。

ENoGと後遺症の関係は「ENoGとは?顔面神経麻痺の予後を考える検査」で解説しています。

主な後遺症の種類

病的共同運動

ある部分を動かそうとすると、別の部分まで一緒に動いてしまう状態です。「口を動かすと目が閉じる」「目を閉じると口角が上がる」「食べるときに目が細くなる」などが代表的です。顔面神経麻痺の後遺症の中で、最もよく知られているものです。

顔面拘縮(こわばり)

麻痺した側の筋肉が硬く縮んだ状態になり、顔のこわばりや突っ張り感、ほうれい線が深くなる、目が細く見えるといった変化が起こります。安静にしているときでも、麻痺側の方が表情が強く見えることがあります。

顔面けいれん(麻痺後の顔面けいれん)

まぶたや頬、口元が、自分の意思と関係なくピクピクと動く状態です。疲れているときや緊張したときに出やすいと感じる方もいます。

ワニの涙

食事のときに、麻痺した側の目から涙が出る状態です。唾液を出すための神経線維が、再生の途中で涙腺の方へつながってしまうことで起こると考えられています。

病院での検査と治療

後遺症の程度や困りごとに応じて、医療機関ではリハビリテーションの指導や、ボツリヌス毒素注射、場合によっては手術などが検討されることがあります。どの方法が合うかは症状によって異なるため、気になる症状があれば、顔面神経麻痺を診ている耳鼻咽喉科・形成外科などに相談してみてください。

日常生活で気をつけたいこと

  • 顔を強く動かしすぎない:回復を急いで、顔を大きく・強く動かす練習を続けると、共同運動やこわばりを強めてしまう可能性があると考えられています。
  • 「小さく・ゆっくり・力まず」:動かすときは、鏡を見ながら左右差や他の部分の動きを確認し、小さな動きで行うことが大切です。鏡を使った練習で共同運動が少なかったという報告もあります[3]。
  • こわばりをやさしくゆるめる:強く押したりもんだりするより、やさしくゆるめることを意識しましょう。

具体的な考え方は「顔面神経麻痺のリハビリ|やりすぎに注意したい理由」で詳しく解説しています。寒い季節にこわばりが気になる方は「冬に顔面神経麻痺のこわばりが気になる方へ」もご覧ください。

後遺症と鍼灸

日本顔面神経学会の『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』では、「鍼灸は後遺症の症状を軽減させる効果があるか」という臨床課題が検討され、「弱く推奨する」とされています[4][5]。解説では、拘縮やこわばり感などの後遺症の軽減について、鍼治療の効果が期待できるとする系統的レビューがいくつか出されていることが改訂の理由として挙げられています[5]。ただし、推奨の強さは「弱い」ものであり、すべての方に効果があるという意味ではありません。

亮鍼灸院の考え方

当院では、顔面神経麻痺の後遺症の時期の施術にも力を入れています。2024年度の日本顔面神経学会では、「病的共同運動が緩和された顔面神経麻痺患者の一症例」として、当院での経過を症例発表しました。

後遺症の時期は、「もっと動かすこと」よりも、こわばりや突っ張り感をやわらげ、自然に使いやすい状態を目指すことが大切だと当院では考えています。そのため、次のような点を確認しながら施術方針を考えます。

  • どの動きで、どの部分が一緒に動いてしまうか(共同運動の出方)
  • こわばりや突っ張り感が強い場所
  • 顔だけでなく、首・顎・鎖骨・肩甲骨まわりの緊張や、呼吸の浅さなど体全体の状態
  • ご自宅でのセルフケアやリハビリのやり方(力が入りすぎていないか)

施術では、顔への鍼に加えて手足のツボへの鍼や、口の内側から筋肉をゆるめる口腔内マッサージを行います。後遺症の変化は少しずつであることが多く、経過には個人差があります。

発症から約8か月、こわばりと左右差が残る方の経過を「【発症から約8か月】眉と口元の左右差が残る顔面神経麻痺の症例」で、回復の途中で共同運動やこわばりの兆しがみられた方の経過を「冬の繁忙期に発症した右顔面神経麻痺|約6か月の経過」でご紹介しています。ほかの症例は「顔面神経麻痺の鍼灸症例」、当院の施術内容は「札幌で顔面神経麻痺の鍼灸をお探しの方へ」をご覧ください。

執筆・監修

鍼灸師 永田亮太

  • 亮鍼灸院 院長
  • 明治国際医療大学大学院 在籍
  • はり師・きゅう師・柔道整復師
  • 日本顔面神経学会「顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会」認定試験 合格(2025年8月)
  • 2024年度 日本顔面神経学会にて症例発表

院長プロフィールを見る →

参考文献

  1. Peitersen E. Bell's palsy: the spontaneous course of 2,500 peripheral facial nerve palsies of different etiologies. Acta Otolaryngol Suppl. 2002;(549):4-30. [PubMed]
  2. Azuma T, Nakamura K, Takahashi M, et al. Electroneurography in the acute stage of facial palsy as a predictive factor for the development of facial synkinesis sequela. Auris Nasus Larynx. 2018;45(4):728-731. [PubMed]
  3. Nakamura K, Toda N, Sakamaki K, Kashima K, Takeda N. Biofeedback rehabilitation for prevention of synkinesis after facial palsy. Otolaryngol Head Neck Surg. 2003;128(4):539-543. [PubMed]
  4. 日本顔面神経学会 編.顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版.金原出版;2023.
  5. 粕谷大智.顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版における鍼灸の役割と可能性.全日本鍼灸学会雑誌.2023;73(4):277-282. [J-STAGE]

※ 本ページは顔面神経麻痺についての一般的な情報提供を目的としたもので、医療機関での診断・治療に代わるものではありません。

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