ベル麻痺とハント症候群の違い|症状・原因・治療を解説
「顔面神経麻痺と言われたけれど、ベル麻痺なのかハント症候群なのか」「耳が痛いのは関係あるの?」――。発症直後に多いご質問です。このページでは、2つの病気の違いを症状・原因・治療・回復の見通しの順に整理します。
耳の痛み・水ぶくれ・めまいがある方は早めに受診を
顔の麻痺に加えて、耳の強い痛み、耳まわりの水ぶくれ、耳鳴り・難聴・めまいがある場合は、ハント症候群の可能性があります。治療開始のタイミングが回復に関わるとされているため、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
こんな症状はありませんか
- 顔の片側が動かしにくいうえに、耳の奥や耳のまわりが痛む
- 耳たぶや耳の穴に赤いブツブツや水ぶくれがある
- 耳鳴り・聞こえにくさ・めまい(ふらつき)がある
- 顔の麻痺が数日かけて強くなってきた
ひと目でわかる違い
| ベル麻痺 | ハント症候群 | |
|---|---|---|
| 頻度 | 末梢性顔面神経麻痺で最も多い | ベル麻痺の次に多い |
| 関係するウイルス | 単純ヘルペスウイルスの関与が考えられている(原因不明の部分も多い) | 水痘・帯状疱疹ウイルス(水ぼうそうのウイルス)の再活性化 |
| 顔以外の症状 | 耳の後ろの痛み、味覚の違和感、音が響くなど | 耳の強い痛み、耳まわりの水ぶくれ、耳鳴り・難聴・めまい |
| 主な治療 | ステロイド薬が中心(抗ウイルス薬を併用することも) | ステロイド薬と抗ウイルス薬の併用が一般的 |
| 回復の傾向 | 多くの方が回復に向かう | ベル麻痺より回復に時間がかかりやすく、後遺症が残りやすいとされる |
※ 上の表は一般的な傾向です。診断と治療方針は、診察した医師が判断します。
ベル麻痺の特徴
ベル麻痺は、はっきりした原因が見つからないまま急に起こる顔面神経麻痺です。顔面神経の炎症とむくみが関わっていると考えられており、ステロイド薬で炎症を抑える治療が中心になります。病気の詳しい説明は「ベル麻痺とは?原因・症状・治療・回復までを解説」をご覧ください。
ハント症候群の特徴
原因は帯状疱疹のウイルス
ハント症候群(ラムゼイ・ハント症候群)は、子どものころにかかった水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が、神経の中に潜み続け、疲れや免疫力の低下などをきっかけに再び活動して起こると考えられています。いわば「耳のまわりに出る帯状疱疹」です。
耳の症状を伴うことが多い
顔面神経のすぐ近くには、聞こえやバランスに関わる神経が通っています。そのため、ハント症候群では顔の麻痺に加えて、耳の痛み・耳鳴り・難聴・めまいなどを伴うことがあります。耳の痛みが顔の麻痺より先に出ることもあります。
水ぶくれがはっきりしないこともある
耳まわりの水ぶくれは、麻痺と同時に出るとは限らず、あとから出てきたり目立たなかったりすることもあります。最初はベル麻痺と考えられていても、経過の中でハント症候群と診断が変わることがあるのはこのためです。
治療開始のタイミングが大切
ハント症候群に対しては、ステロイド薬と抗ウイルス薬を組み合わせた治療が行われるのが一般的です。日本でハント症候群の方80人を調べた研究では、発症から3日以内に治療を始めた方の75%で麻痺が完全に回復したのに対し、7日を過ぎてから治療を始めた方では30%にとどまったと報告されています[2]。
「様子を見ていたら悪くなった」という声も少なくありません。耳の痛みや水ぶくれ、めまいがある場合は、自己判断で様子を見ずに医療機関へ相談してください。
回復の見通しと検査
ハント症候群は、ベル麻痺と比べて神経の傷みが大きくなりやすく、回復に時間がかかったり、後遺症が残りやすかったりする傾向があるとされています。麻痺が強い場合は、発症から1〜2週間ごろにENoG(誘発筋電図)で神経の状態を確認し、見通しを考えることがあります。
ENoGの数値の読み方は「ENoGとは?顔面神経麻痺の予後を考える検査」で、回復の途中で起こりうる共同運動やこわばりは「顔面神経麻痺の共同運動・拘縮とは?後遺症を解説」で解説しています。
耳の症状が残ったとき
ハント症候群では、顔の麻痺が回復してきても、耳鳴りや聞こえにくさ、ふらつきが気になる方もいます。耳の症状については、耳鼻咽喉科での聴力検査などで経過を確認してもらうことが大切です。
鍼灸について
日本顔面神経学会の『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』では、顔面神経麻痺に対する鍼治療が、急性期・慢性期とも「弱く推奨する」とされています[1][3]。ただし、ハント症候群の治療の基本は医療機関での薬物治療であり、鍼灸がその代わりになるものではありません。発症直後に鍼灸を受けることについては「発症直後に鍼灸を受けてよいか」で解説しています。
亮鍼灸院の考え方
当院には、ハント症候群で入院治療を受けたあとに来院される方もいます。初回には、入院中の治療内容、柳原法やENoG(筋電図)の結果、耳の症状の有無をうかがったうえで、顔の動きと、首・顎・肩まわりの緊張や呼吸の状態などを確認します。
ハント症候群の方は不安が大きいことも多いため、検査結果の意味や、これからの時期に気をつけたいことを、できるだけわかりやすくお伝えするよう心がけています。病院での通院・検査は継続していただき、その内容を確認しながら施術方針を考えます。
ハント症候群の方の経過は、症例「ハント症候群による重度の顔面神経麻痺|週2回・約3週間の経過」や「ハント症候群|発症10日後から約6か月の経過(60代女性)」でご紹介しています(経過には個人差があります)。当院の施術内容は「札幌で顔面神経麻痺の鍼灸をお探しの方へ」をご覧ください。
参考文献
- 日本顔面神経学会 編.顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版.金原出版;2023.
- Murakami S, et al. Treatment of Ramsay Hunt syndrome with acyclovir-prednisone: significance of early diagnosis and treatment. Ann Neurol. 1997;41(3):353-357. [PubMed]
- 粕谷大智.顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版における鍼灸の役割と可能性.全日本鍼灸学会雑誌.2023;73(4):277-282. [J-STAGE]
※ 本ページは顔面神経麻痺についての一般的な情報提供を目的としたもので、医療機関での診断・治療に代わるものではありません。
顔面神経麻痺についてさらに知る
顔面神経麻痺についてお悩みの方へ
亮鍼灸院では、病院での診断・治療内容や発症からの経過を確認しながら、施術方針を考えています。病院での治療中の方、発症から時間がたって後遺症が気になる方も、ご相談ください。
栄町院 011-839-0217 / 大通院 011-213-0722(木・日定休)









