顔面神経麻痺のリハビリ|やりすぎに注意したい理由
「早く元の顔に戻りたい」と、毎日鏡の前で一生懸命に顔を動かしている方は少なくありません。その気持ちはとても自然なものです。ただ、顔面神経麻痺のリハビリは「たくさん・強く動かすほど良い」とは限りません。このページでは、リハビリでやりすぎに注意したい理由と、当院がお伝えしている考え方をまとめました。
リハビリの合言葉
小さく・ゆっくり・力まず
リハビリの方法や開始時期は、麻痺の程度や時期によって異なります。医療機関でリハビリの指導を受けている方は、その指示を優先してください。
こんなリハビリをしていませんか
- 動かない側を動かそうと、顔全体に力を入れて大きく動かしている
- 「あいうえお」や頬をふくらませる練習を、何十回もくり返している
- 顔を強くもんだり、押したりしている
- 市販の器具や電気刺激を、自己判断で使っている
なぜ「やりすぎ」に注意が必要なのか
顔面神経麻痺で神経が強く傷んだ場合、神経は時間をかけて再生していきます。その途中で、本来つながるべき筋肉とは別の筋肉にも神経がつながってしまうことがあり、これが「口を動かすと目が閉じる」といった共同運動の原因と考えられています(くわしくは「顔面神経麻痺の共同運動・拘縮とは?後遺症を解説」)。
動かない部分を無理に動かそうとして顔全体に強く力を入れると、本来は使わなくてよい筋肉まで一緒に働かせるクセがつきやすくなります。そのため、回復途中の強い運動は、共同運動やこわばりを目立たせる可能性があると考えられています。
当院のブログでも、この点を「【4コマ漫画】顔面神経麻痺のリハビリ、頑張りすぎていませんか?」でご紹介しています。
「小さく・ゆっくり・力まず」とは
小さく
大きく動かそうとせず、健康な側の動きに合わせられる範囲の、小さな動きで行います。左右差が大きくならない範囲にとどめることがポイントです。
ゆっくり
勢いをつけず、ゆっくり動かしてゆっくり戻します。速く動かすと、他の部分に力が入っていても気づきにくくなります。
力まず
肩や首、顎に力が入っていないかも確認しましょう。顔を動かそうとすると、無意識に歯をくいしばったり、肩をすくめたりする方が多くいます。
ミラーフィードバック(鏡を使った練習)
鏡を見ながら、ほかの部分が一緒に動いていないかを確認しつつ練習する方法を「ミラーフィードバック(ミラーバイオフィードバック)」といいます。
日本の研究では、完全麻痺の方を対象に、鏡を見ながら「口を動かすときに目の開き方が左右で同じになるよう保つ」練習を毎日30分、10か月続けたグループで、練習しなかったグループより共同運動の程度が少なかったと報告されています[1]。
鏡を使った練習の一例
- 正面に鏡を置き、顔全体が映るようにします。
- 肩・首・顎の力を抜き、ゆっくり呼吸します。
- 口元を小さく動かしながら、目の大きさが左右で変わらないかを鏡で確認します。
- 目が細くなる、他の部分が引っ張られると感じたら、動きをさらに小さくします。
- 疲れる前にやめます。回数を増やすことより、丁寧さを大切にします。
※ 一般的な考え方の一例です。麻痺の時期や状態によって適した方法は異なるため、主治医・リハビリ担当者・施術者に相談しながら行ってください。
時期によって変わるリハビリの考え方
発症直後〜麻痺が強い時期
無理に動かす練習より、目の保護や休養を優先します。顔のこわばりが出ないよう、やさしいマッサージなどを指導されることもあります。
動きが戻ってくる時期
共同運動が出始めることがある時期です。鏡で確認しながら「小さく・ゆっくり・力まず」を意識します。
後遺症が気になる時期
こわばりをやさしくゆるめることと、共同運動が出にくい動かし方を身につけることが中心になります。
回復の見通しを考えるうえでは、ENoGの値も参考になります。「ENoGとは?顔面神経麻痺の予後を考える検査」もあわせてご覧ください。
リハビリのエビデンスについて
顔面神経麻痺に対する運動療法などの理学療法について、国際的な系統的レビュー(コクランレビュー)では、質の高い根拠はまだ十分ではないとしたうえで、一人ひとりに合わせた顔の運動が機能の改善や後遺症の軽減に役立つ可能性を示す、質の低い根拠があるとまとめています[2]。リハビリは結果が約束されたものではなく、後遺症をできるだけ目立たせないための工夫と考えるとよいでしょう。
亮鍼灸院の考え方
当院の院長は、日本顔面神経学会が実施する「顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会」の認定試験に合格しています(2025年8月)。施術の際には、ご自宅でのリハビリやセルフケアのやり方もうかがい、力が入りすぎていないか、回数が多すぎないかを一緒に確認するようにしています。
顔を動かすときに、首や顎、肩に力が入ってしまう方は少なくありません。当院では、顔だけでなく首・顎・鎖骨・肩甲骨まわりの緊張や呼吸の状態も確認し、体全体の力みがゆるんだ状態で顔を動かせることを目指して施術を行っています。また、ご自宅でできる口腔内マッサージの方法もお伝えしています。
リハビリを並行しながら施術を受けた方の経過は「顔面神経麻痺の鍼灸症例」でご紹介しています(経過には個人差があります)。当院の施術内容は「札幌で顔面神経麻痺の鍼灸をお探しの方へ」をご覧ください。
参考文献
- Nakamura K, Toda N, Sakamaki K, Kashima K, Takeda N. Biofeedback rehabilitation for prevention of synkinesis after facial palsy. Otolaryngol Head Neck Surg. 2003;128(4):539-543. [PubMed]
- Teixeira LJ, Valbuza JS, Prado GF. Physical therapy for Bell's palsy (idiopathic facial paralysis). Cochrane Database Syst Rev. 2011;(12):CD006283. [PubMed]
※ 本ページは顔面神経麻痺についての一般的な情報提供を目的としたもので、医療機関での診断・治療に代わるものではありません。
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亮鍼灸院では、病院での診断・治療内容や発症からの経過を確認しながら、施術方針を考えています。病院での治療中の方、発症から時間がたって後遺症が気になる方も、ご相談ください。
栄町院 011-839-0217 / 大通院 011-213-0722(木・日定休)









